まず、読む前に考えたいのは時の扱い方にあると思う。本作の中でも述べているが時とは、通事と共時の両側面から出来ている。更に言えば、それらは幾重にも折り重なる繊維のようで異なる次元がいくつも絡まり合っている。著者の時の扱い方を尋ねてみたいところである。
さて、本作では都市における共時態に主にフォーカスしている。土地の所有区分から建築の出来方に至るまで圧倒的解像度で今日の歓楽街の成り立う膨大な作業量は圧巻である。
ところで、本書は闇市とその変遷と読むばかりでなく高度成長期へと向かう日本の都市の中で日本の建築行政がどのように歩みを進めてきたのかと読むとより面白いのではないだろうか。
【日本建築行政論序説として】というサブタイトルも成り立ってしまうところに面白みがあるように思える。
読めば読むほどに広がる世界が筆者の熱のこもった文章から伝わってくるものがある。
惜しむらくは、法制度や慣習といったところに対する追求が曖昧になってしまっている点ではないだろうか。次回作があるならば、そこに期待したい。
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